Actualités - GCC便り
十問で分かる自然派ワイン
(「La Revue du Vin de France 増刊36号 2019年6月」より抜粋)
自然派ワインに定義は無いが、ビオロジック(有機)栽培かビオディナミック栽培のぶどうで出来ているという点に異論はなかろう。
亜硫酸を添加しないのが自然派ワインだと決め付ける向きも多い。「亜硫酸無添加」とラベルに書きたくて、亜硫酸に頼らず酸化を防ぐために低温殺菌や保存料の添加、極端な濾過など「不自然」な工程を経た「自然派」ワインも販売されている。
AVN (Association des vins naturels)とS.A.I.N.S.という自然派ワインの生産者団体は、亜硫酸添加について明確な規定をしている。AVNは加盟者に10mg/lまでの亜硫酸添加を認めている。但しAVNのロゴを貼れるのは亜硫酸無添加の生産者のみ。S.A.I.N.S.の方は亜硫酸無添加を一切認めていない。
自然派ワインはビオだが、ビオワインは必ずしも「自然」ではない。
ビオワインの欧州憲章(Cahier des charges européen)は、栽培や醸造にはかなり厳格な規定があるが、熟成段階には放任主義。低温殺菌もタンニンやオークチップ(木屑)の添加も許されている。
薬品や添加物を極力加えないことによる自然派ワインの欠点をいくつか挙げると、
- 揮発性の酸が強いと生じるマニキュアや接着剤や酢のような不快な香りのいくつかは、時間が経てば自然に消える。
- ブレタノマイセス酵母は濡れた犬や馬のようなアニマル臭を発する。
- 亜硫酸を入れずに酸化を抑える方法のひとつが、減圧下での醸造。空気に触れさせず、まさに酸化の逆を行うために発生する還元臭(こもった臭い、湿ったカーブ、メルカプタン)は、空気に触れさせれば必ず消える。
- 微発泡はワインの発酵により起こる。気になる人は、瓶を親指でふさいで振ってガスを抜くか、勢いよくカラフェすればよい。
自然派ワインにありがちな「欠点」を抑える技術は、ここ数年で著しく向上した。それに、分析上完璧なワインが得てして退屈だったりする一方、あれこれ特徴のあるワインは多くを語りかける。
(須藤)
須藤 秀章
1986年にAcadémie du Vinでワインに開眼。CIDDのAlain Segel氏によるワインと料理の組み合わせ(Mariage)に感動して以後、自らも垂直試飲・平行試飲を中心とする比較試飲会を企画。在パリのワイン愛好者が集まっての試飲会を1991年にGrand Cru Clubと名付ける。
1995年より日本でも試飲会を開催。パリでの試飲会にワイン生産者を招いたり、産地を訪問して葡萄の生育や醸造への理解を深めるツアーを企画したり、ワインのもたらす楽しみを少しでも多くの人と分かち合うために情熱を傾けている。